田舎のテクノが陽の目を見る日

人や物、この世に初めて生まれたものには、名前をつけなければなりません。
もちろん自分が作った曲にも、です。

僕の音楽なんて、趣味でやってる一介の田舎テクノミュージシャンのものなので、誰かに求められて作ったものではありません。自分が家で聴いて気持ち良くなれるようにと思って始めたものなので、曲名なんて付ける必要はありませんでした。

その後、サウンドクラウドにアップするようになるとさすがに曲名が必要で、適当に、本当に適当にタイトルを付けるようになります。まじめに考え始めたら、いい年したおっさんが中二病全開なタイトルを付けそうだったし、あとMOGWAIがインタビューで、曲名は適当に付けていると言っていたからというのも理由の1つです。

 

彼らの曲の名前には「Hardcore Will Never Die, But You Will(アル中は死なないけど、お前は死ぬ)」とか「i'm jim morrison, i'm dead」「killing all flies」など、ふざけたものが多い。
また、適当に付けたんだろうと思われるのに、やけに哲学的な「2 rights make 1 wrong」だとか「I know you are but who am I」なんてのもある。
メンバーが空港でライオネルリッチーを見かけて声をかけようとしたら、酔っ払ってたから「You're Lionel Ritchie!」としか言えなくて、それを見ていた他のメンバーが大爆笑した、というエピソードから付けられたその名も「You're Lionel Ritchie」は、まるで曲と関連性が無い。

 

そんなこんなで、自分もそれはそれは適当に付けるわけです。nathan fakeの真似をして作ったから「fake nathan fake」、冬の夜に足先が冷えるのを気にしながら作ったから「hiesho」。MIKUさんのアルバムに触発されて作ったからMIKUをアナグラムにした「I'm UK」など。
歌詞があればまた別なんでしょうけど、僕が曲を作り始めるときは、100人くらいの野外イベントの午前3時頃に鳴ってそう、とか、2000人くらい集まった幕張メッセで、朝方疲れきったところで聴こえてきそうとか、そんなイメージが基になっているので、クールな曲名なんて付けようもないのです。

 

だから、この間作った曲も「出来上がった曲を部屋で寝転びながら聴いてミックス具合を確認しようと思って、何も考えずそこにあったクッションに寝転がったら、北枕だった」ということで、保存するときに「kitamakura」と名付けました。保存した瞬間からこの曲は「kitamakura」。どんなにダサいと言われようと「kitamakura」。

先日のライブで初披露。12分くらいから。

soundcloud.com

 

そして、この「kitamakura」、この度、縁あってリリースされることになりました。
Psyde3の親方shotaの繋がりで紹介してもらったフィンランドのレーベルsuper life recordsから。3月か4月くらいにリリース予定です。

訊かれました、曲名の意味。
見栄っ張りな僕は、さもコンセプトがあるかのように「北に枕を向けて寝ることを日本では北枕と言って、死んだ人は北枕にして寝かせるんだけど、北枕にすると良く眠れるって説もある」と説明。返ってきた返事は一言「Cool!」。
東洋の神秘っぽく聞こえたのでしょうか。それともフィンランド人は、返事に困るとクールと言うのでしょうか。
とにもかくにも、曲作り・ライブを始めるようになったときに「いつかリリースできたらいいなー」と思っていたので、凄く嬉しいです。

 

デジタルリリースが簡単になった今では、音源リリースなんて珍しいことではなく、super life recordsだって決してコマーシャルなレーベルではありません。
ただ、コマーシャルであることとレーベルの質が高いこととはイコールではありません。むしろテクノに関して言えば、メジャー傘下のレーベルなんて皆無で、アンダーグラウンドで優れたレーベルがたくさんあります。
もちろんアンダーグラウンドが一概に良いとも思っていません。ともすれば、ただの仲間内のノリだけで事が進んでいくからです。レーベルもパーティーも。

 

アンダーグラウンド」という言葉に甘えて、身内だからいっか、とか、お金かけなくていいや、とか、そんな考えで1年2年続けても何も進みません。変わり映えのしない出演者・客・演出。
ローカルでアングラだからこそ、軸やコンセプトをしっかり持ってそれを発信すべきだし、それをビジュアライズしたロゴやフライヤーを作るべきだと思うんです。
せっかくDJネームをつけたなら、そして「色んなパーティーでDJやりたい」なんて言うのなら、自分がどんな音楽をやっているかを説明するか、ミックス音源の1つでも作るべきなんです。
「プロじゃないのにそこまでやらないよー」とか言われましたが、プロじゃないからこそ自分でやるんです。プロなら周りがやってくれるんです。たぶん。
「ジャンルなんて関係なくって好きな音をかけてるだけで、強いて言えばジャンル”自分”」というあなたのセリフを聞いて、誰が出演依頼をしますか?

この「アングラかっこいい(と言ってる自分かっこいい)」みたいな妄信は、視野が狭くて嫌いです。楽をすることをアングラという言葉にすり替えているようにしか思えない。いや、かっこいいんですよ、アングラ感あふれるパーティー。ただし、本当にアングラでかっこいい人・パーティーはおしなべて、アングラじゃないものの良さも認めていることが多いと思います。メジャー?セルアウト?のように考えて、アングラに行動する。それこそかっこいいと思います。

そもそもテクノがアングラなのは当たり前のことじゃないですか。自治体主催のレイブなんて無いでしょ。まぁ、あってたまるかって話ですけど。

芸能人じゃないからといって、着飾ったりメイクをするのを止めるなんてことはしないのと一緒で、プロじゃなくたって、きっちりと音源・プロモーション素材を作るべきだと思います。最低限の装いというものがあると思います。コマーシャルとプロモーションを履き違えてはいけません。
だんだん支離滅裂になってきましたが、何が言いたいかと言うと、DJの皆様、ミックスを録りましょうよ。
特に、僕と直接知り合いのあなた。
僕は、ミックスクラウドで人気の顔も知らない海外のDJのプレイではなくて、性格とか声とか知ってるあなたのミックスを聴きたいんです。

 




だいぶ話が逸れましたが、ローカルでノンコマーシャルでやるということは、少なくともテクノという音楽・文化・コミュニティそれ自体を好きでないと出来ない・続かないということです。ましてやレーベル運営なんて、相当好きじゃないとできませんよね。
なので、super life recordsのオーナーから「リリースしよう」と言ってもらえたことは、1人のテクノフリークから認められたってことで、とっても嬉しいのです。



ありきたりですが、いつも僕の地味な活動をサポートしてくれる家族、友人、そしてサポート以上のことをしてくれているshota氏に感謝しています。

僕の拙作をリリースしてくれるフィンランドのsuper life recordsには足を向けて寝られません。

はっ!北に足を向けられないということは、やはり北枕だな!